教えて!林先生!vol1『胃の検査をするとき胃カメラとバリウムどっちがいいんですか?』

2021.3.18

林先生に医療についての素朴な疑問をぶつけてみる企画『教えて!林先生!』。
今回は第一弾として「胃の検査をするとき胃カメラとバリウムどっちがいいんですか?」をテーマにお伺いさせて頂きました。

胃カメラとバリウムはどちらがいいんですか?

-人間ドッグで胃の検査をすることがあると思うんですが、胃カメラとバリウムとどっちを選択したらいいですか?

基本は胃カメラでいいと思います。
胃カメラはバリウム検査に比べて小さながん、つまりは早期がんを見つけることができるからです。

バリウム検査は、胃の壁面の凹凸を立体的に見ることができる検査です。
人間ドックを受けたことがある人は分かると思いますが白い液体を飲みますよね?
この液体をレントゲンで見ると白く映り、空気は黒く映るため、胃の壁面に沿ってこの液体が流れると壁面の形が白黒で判別出来るわけです。
そのため、胃の粘膜の異常などを見つけることができます。

しかし先述の通り、胃カメラと比べると細かいところが見れないデメリットがあります。
胃カメラであれば5mmの小さいがんも見つけることが出来ますが、バリウム検査で見つけることは厳しいです。
スキルス胃がんという胃がんの種類の一つはバリウム検査の方が分かりやすいという稀なケースもあることはありますが、
基本的にバリウム検査で早期がんはなかなか見つかりません。

実はバリウム検査は日本で確立された技術のため、日本でしか普及しておらず、海外ではほぼ使われていない検査方法です。

-バリウム検査は放射線による被曝リスクもあるという話を聞いたことがあります。

放射線による被曝リスクは0ではありませんが、現在普及している多くの機械は昔と比べてかなり精度が向上してますし、撮影時間も短くなっているためほとんど気にしなくて良いレベルだと思います。

-なるほど。では被曝リスクというより、検査精度を考えて胃カメラの方が良いということですね。

胃カメラは鼻からと口からにどんな違いがあるのですか?

-ちなみに胃カメラは口からと鼻からの2つのパターンがあるかと思いますが、どちらが良いなどありますか?

昔はカメラの精度の問題で、口からの方がチューブが太くカメラも大きかったため、解像度が高いとういう差がありました。
しかし、最近は口と鼻の両方に対応するスコープもあり、鼻からのカメラも遜色ないため、精度の点ではどちらがよいというのはないです。
身体的負担の観点で患者さんにとって鼻の方が楽ということもよく言われますが、
鼻腔からは挿入できなかったり、鼻出血を起こす方もいらっしゃいます。
大事なのは口か鼻かということよりも医師の技量と判断です。

-確かに胃カメラの苦しさは医師の腕にかなり左右されそうですね…

はい。
胃カメラが苦しくて嫌だという患者さんは多いですが、つらさは医師の腕でかなり違いますよ。
苦しいからという理由で鎮静剤を使って寝てる間に行う人もいますが、私が胃カメラを行う際は基本的には鎮静剤は使いません。

-そうなんですね。鎮静剤を使えば寝ている間に終わるので患者さんにとって楽だと思いましたが、なぜおすすめしないのですか?

あまり知られていませんが、全身麻酔剤で寝ている間に検査を行うことで、呼吸停止や意識障害のリスクがあるのです。
滅多に起きませんし、それで心肺停止などになることはほぼありませんが、医師にとってもやはり怖いものです。
また、鎮静剤を使えば患者さんご本人は検査中に発生する痛みなども分からないため、医師の腕もごまかせます。腕に自信のある医師であれば鎮静剤はおすすめしないと思います。

-鎮静剤にもデメリットがあることは知りませんでした…

鎮静剤や麻酔を使わずに検査をするメリットは、入院されているご高齢の方などには特に顕著に現れます。患者さんの症状や個人差にもよりますが、私は極力強い麻酔などを使わないようにすることで、患者さんの元気な時間を少しでも長く確保できるように努めてまいりました。

どのくらいの頻度で行うのがベストですか?

-胃カメラを行う頻度はどのくらいがベストですか?毎年行う必要はありますか?

胃がんの原因はほぼ100%ピロリ菌ということがわかっています。
ピロリ菌の感染は子供の頃に起こることが大半で、大人になってから感染することは多くありません。
そのため、ピロリ菌がいないことが検査でわかっている、もしくは除去した後であれば2年に一度くらいの検査をお薦めしています。

胃がんのように感染が原因で起きるがんは、慢性炎症というのがベースにあります。
ピロリ菌が胃に感染すると、粘膜に炎症が起き、急性胃炎になります。
身体はそれを治そうとして、炎症したり修復したりを繰り返し慢性的に細胞分裂が盛んに行われ、
その際に遺伝子のミスコピーが生じてそこががん化するということが起きます。

ですので、逆にピロリ菌さえいなければそこまで毎年のように見なくて大丈夫だと思います。

その代わりピロリ菌がいると胃がんのリスクは、ピロリ菌がいない人と比べるとずっと高くなるので、
ピロリ菌検査は必ず行い、もしもいた場合は除去しましょう。

-ではピロリ菌さえいなければ正直そこまで定期的に胃カメラを見る必要はないということでしょうか?

そこが勘違いされやすいところですが、食道がんや十二指腸がん、あるいは胃の悪性腫瘍など胃には胃がんだけではなく他にも病気はあります。
また他の臓器の異変に気づくことも多々あるので、やはり2年に1度は行うべきでしょう。

検診は何歳からやるのが良いのでしょうか?

-何歳から検査を行なったらいいでしょうか?

現在、国が推奨しているがん検診は40歳からです。
40歳以上の方でがん検査を行うことで死亡率を下げられるというデータがあるからです。でも、私はもっと若いうちから行った方が良いと思っています。

日本人は予防に関する意識がとても低いです。
がん検診を定期的に受けていて、そこでがんが見つかって死亡するというのは今やほとんどないのですよ。
検診はせずに症状が出てひどくなってから来院されているケースばかりです。

忙しいを理由に来院されない方も多くいらっしゃいますが、命よりも優先されて忙しいなんてことは絶対にないですし、
健康でなくなったらそもそも仕事ができなくなるのでとてもおかしな理由だと思います。

ただし「痛みを伴う検査」などネガティブなイメージをもつのものに対して、人は積極的に行おうとは思わないものなので、
もっと気軽に検診を受けられるようにもしていくべきです。
時代の流れでオンライン診療などは良いことだと思ってます。

もちろんオンラインで行うことで精度が落ちることは当然あると思いますが、何もやらないよりはよっぽど良いと思います。
オンラインに100%を求めるわけではなく、患者さんの第一歩のハードルを下げることになればということです。

私も時代の流れに合わせた医療のあり方を模索しつつ、浸透させていきたいと思っています。

若い世代の皆さんも健康だからと過信せず、また仕事などを言い訳にせず、早いうちから定期的に検診を受けるようにしてください。

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