教えて!林先生!vol2『がんってどんな病気?』

2021.6.11

教えて!林先生!vol2『がんってどんな病気?』

私は医者になって約35年間、ずっとがん医療の最前線で仕事をしてきました。
テレビや新聞では、毎日のようにがんのニュースを見かけます。
本屋さんに行けば、がんに関する本が何十冊も並んでいますし、インターネットにもがんの情報があふれています。
今やがんは国民にとって、最も身近な病気かもしれません。

実際に、わが国では、がんは昭和56(1981)年に死亡原因の第1位となり、超高齢化社会の到来と共に、その後も年々増え続け、現在、国民の実に約3人に1人が、がんで亡くなっているのです。
最新の統計では、日本人が生涯でがんになる確率は、男性65.5%、女性50.2%にも達します。
すごい確率ですが、日本人の2人に1人ががんになる、ということは、厳粛たる事実です。

でも、実際に病院でがんを告知されると、患者さんの多くは、「うちは、がん家系ではないから、そんなはずはありません」と否認したり、「あり得ない!」とパニックに陥ったり、「なぜ、よりによって、私が・・!」と、絶望感に襲われたりします。

2人に1人の病気なのに、どうしてなのでしょう?

6割のがん患者さんは治ります!

「いくら身近な病気だって言っても、がんになったら死んじゃうんだから、慌てるに決まってるじゃないか!」、と憤慨される方も多いと思います。

でも、ちょっと待って下さい。

生涯のうちに、日本人の2人にひとりががんになるとお伝えしましたが、実際の数字で見てみましょう。

国立研究開発法人国立がん研究センターは、2019年にがんで死亡した人は376,425人(男性220,339人、女性156,086人)、そして2017年に新たに診断されたがんは977,393例と報告しています。単純に考えれば、差し引き約60万人は亡くなっていない!ということですよね。

もちろん、がんになってから亡くなるまでには、それなりの時間差があります。
当然、年月の要素も併せて考えなければいけませんが、それでもこの研究結果からは、わが国でがんと診断された患者さんの6割以上は治っていると言えそうです。

どうでしょう、あれあれ? 意外なデータではないですか?

がん細胞とは、どんな細胞なのでしょう?

われわれの体には、約37兆個の細胞があるとされています。
生命活動を行っている限り、組織は成長や新陳代謝を続けますが、言い換えれば、毎日、体内では何百億個という細胞が死に、そして新たに生まれているのです。

細胞分裂は、もとの細胞にある遺伝子情報のコピーから始まりますが、その遺伝子情報の本質は、DNAに並んだ塩基の単純な配列です。

細胞は化学反応により、30億個といわれる膨大な塩基配列を読み取り、奇跡ともいえるような正確さでコピーし、全く同じ遺伝子情報を持った2つの細胞に分裂します。
その様子は下の動画をご覧下さい。これはウニの受精卵細胞の分裂像です。
時間は早送りになっています。

このように、ほとんどの細胞は生涯、常に分裂を繰り返しますが、あまりに遺伝子情報が膨大なため、時に、コピーミスしてしまうことがあります。
がん細胞はこのコピーミスが原因で生じます。
発がん物質や放射線は、遺伝子を傷つけ、このコピーミスを起こしやすくするのです。

しかしながら、コピーミスしたまま生まれた細胞は、正常細胞とはちょっと顔つきが変化するものの、いきなりがん細胞に変化するわけではありません。
通常は、何回かミスが重なって、修復不可能になった時に、はじめてがん化すると考えられています。

そして、数学的な確率から考えると、ヒトの体内では、毎日、何百、何千というがん細胞が生じているはずなのですが、皆さんががんを発症しないのはなぜでしょうか?

その大きな力となっているのは、われわれの体に備わる強力な免疫機構です。
通常は、がん細胞が生まれても、自分の免疫力によって、すみやかに排除されているのです。
下の図は、マクロファージと呼ばれる免疫担当細胞が、細菌やがん細胞を攻撃している想像図です。

ただ、時として、免疫細胞の厳しい監視の目をすり抜けて、がん細胞が増殖し続けることがあります。
それがいわゆる「がん」と呼ばれる疾患です。

今回はここまで。
次回は早期がん、早期発見、早期治療などに関してお話ししていこうと思います。

医療についてTwitterで発信しております!
是非ご覧ください☆
https://twitter.com/Dr_hayashikaz?s=20