教えて!林先生!vol3『早期発見、早期治療の大切さ』

2021.6.17

早期がん、とはいうけれど…。

1個のがん細胞は、1mmのさらに100分の1以下の大きさですが、分裂を重ね、指数関数的に増殖します。
ところが、最新の内視鏡や超音波、CT、MRIなどの最新機器を用いても、われわれ専門家が発見しうる最小のがんは、一般的には直径1cm、重さにして1g程度の大きさです。

まだ1cmなら、ごく早期なんだろう、って思いますよね?

ところが、がん細胞の立場で考えると、全く違うんです。

私たちにとっては、わずか1cmの腫瘤ですが、顕微鏡で見ると、そこには10億(10の9乗)個ものがん細胞が存在します。
そして、1個のがん細胞は、10-20年という年月をかけて、1cmの腫瘤(しこり)になるとされています。
ところが、がん細胞が1兆(10の12乗)個、Kgの重さまで増殖すると、われわれは生きていくのが難しくなります。

ここで、学生の時、数学の授業で勉強した、対数の概念を思い出してください。
がん細胞の増殖を、実感をもって理解していただくために、数字で表してみます。

1個→ がん発生!
10個
100個
1,000個
10,000個
100,000個
1,000,000個
10,000,000個
100,000,000個
1,000,000,000個→ 10億(10の9乗)個(早期がん)
10,000,000,000個
100,000,000,000個
1,000,000,000,000個→ 1兆(10の12乗)個(生存困難)

いかがでしょう?

がん細胞が発生してから、早期がんで見つかるまでに対して、早期がんが増大して、私たちの命を脅かすようになるまでの期間の方が、ずっと短いことがお分かりいただけると思います。

そして重要なことは、私たちは、このごく短い期間のうちにがんを見つけなければ、がんとの戦いに負けてしまう、という事実です。

がんは、早期発見、早期治療すれば治る病気です!

がん患者さんの6割は治るって、一般の方々にはあまり知られていない、驚きのデータですが、残念ながら、どんな臓器の、どんなステージのがんでも6割が治癒する、という訳ではありません。
手の施しようのないがんもたくさんあります。

それでは、どうすれば確実にがんを治せるのでしょう?

絶対に必要な事が1つあります。 早期発見、早期治療です。

がん検診の案内などに、「早期発見が重要です!」なんて書いてあるのを目にしたことはありませんか?
下の表は、がん病変が大きく拡がったり、転移をしたりしていない、限局がんの5年生存率です。

ほとんどのがんで、5年生存率は90%を大きく超えています。
乳がんや前立腺がんは、ほぼ100%です。
難治がんと言われる肺がんだって、早期に見つけて治療すれば、5年後も8割近くの方が、お元気なのです!

「じゃあ、みんながどんどん早期発見すれば、がんで死ぬことはなくなるのでは?」って思った鋭いあなた! 素晴らしいです! その通りです!

少し進行した、領域がんの5年生存率は…

がんを完治させる条件が早期発見・早期治療だなんて、偉そうに言うと、「なんだ、そんなの当たり前じゃないか!」とか、「結局、偶然に発見されるぐらい早期じゃないと、助からないのでしょう?」と、すぐに反論されそうですね。

実際にはどうなのでしょう?

前述の国立がん研究センターがん対策情報センターのデータでは、限局がんの5年生存率は軒並み90%を超えていましたが、さらに進行した場合のデータも明らかにしています。

領域がん、つまり、がんが、隣接する臓器に浸潤していたり、すぐ近くのリンパ節に転移しているような、少し進行したがんの5年生存率は、次の通りです。

この数字を見て、どう思われますか?

もちろん、限局がんよりは生存率は下がりますが、それでも、決して低くはありません。
全てのがんを総計したデータでも、限局がんの5年生存率は88.9%と極めて良好でしたが、領域がんでも、52.1%と、やはり半分以上の患者さんは5年間生存しています!

がんは、多少進行していたって、すぐに命を失うような病気ではないんです。

早期がんを見つけるために

それでは、どうすれば、がんを早期のうちに見つけることができるのでしょうか?

がん患者さんに対して、がんを発見した経緯をおたずねした調査があります。 

自覚症状が出現したため、医療機関を受診して発見された患者さんが47.2%、住民検診あるいは職場検診で発見された患者さんが31.9%でした。
自覚症状が出るまで、検査を受けない方が相当数いらっしゃることが伺えます。
さて、検診に行くのと、症状が出てから受診するのでは、どのような違いがあるのでしょうか?

各がんごとに、発見経緯とがんの進行度の調査を行った別の研究があります。

早期がん(上皮内がん+限局がん)の割合は、全てのがんで、検診群が、受診群(検診以外の発見経緯)よりも、ずっと高いようです。
早期がんを見つけるためには、検診を受けた方が有利なことは、明らかですね。

がん検診を受けない理由

がん検診は、厚生労働省の指針に従い、健康増進法第19条に基づく健康増進事業として以下の5つのがんを中心に、市町村が実施しています。

ところが、わが国ではこの検診の受診率がなかなか上がりません。
平成25年のデータでも、各がんで30%台です。

その理由はいったい何なのでしょうか?
調べてみたら、厚生労働省がちゃんと調査していました。

う~ん、分かるような、分からないような…….
がんの医者としては、ちょっと残念なデータです。

みなさん、がん検診はしっかり受けましょう!!

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